グローバル・ベーシック・インカム(Global Basic Income)


『モンゴルの遊牧民の少女』

岡野内 正

ベーシック・インカムとは、すべての人間に対して、生涯にわたって、生活費の仕送りを保証する共同の基金から、個々人に支払われるお金のことです。
文字通り、地球上すべての人間75億人ひとりひとりに支払われるそのお金が、グローバル・ベーシック・インカム(地球人手当)です。
21世紀の人類は、そんなすごい人類共同の基金(地球人手当基金)を造って運営する技術と経済力を持っています。

基金といえば、普通は、なんらかの理由で集めたお金を、銀行に預けたり、株などに投資して、利子や配当を得ながら、そのお金を大事に増やす、つまり資金運用します。ところが、最近の資金運用のための投資市場では、ほんの少数の投資銀行や投資家たちが、株式を所有してコントロールする持株会社などのネットワークを通じて、世界のほとんどのグローバル企業や多国籍企業の経営を左右し、株式・証券価格から商品価格までを寡占的に操作できる力を持っています。したがって、その基金が現代の巨大銀行や投資家たちに利用されてしまい、安定した配当収入を得られない恐れがあります。

グローバル経済を支配する多国籍企業に人類全体が支配されないためには、人類全体で多国籍企業の経営を支配するのが一番です。そのための方法として、人類全体の一人一人が株主となる巨大な持株会社を創り、その持株会社を通じて、巨大銀行をも含む多国籍企業の議決権の過半数を握る株主になって、多国籍企業全体の経営を左右し、全多国籍企業はの利潤からの安定した配当収入を確保するばかりか、人権や労働や環境への配慮のある経営を推進させるという方法があります。

世界の大企業のほとんどが多国籍企業になってとりわけ銀行や金融機関が大きな役割を果たすようになったグローバル化の中で、人類全体の一人一人が、多国籍企業を通じてグローバル経済をコントロールできる、そんな可能性が開けてきたわけです。

しかし、学者や研究者も含めて世界中の多くの人々の頭は、いまだに、貧しかった20世紀の技術と経済力のイメージのまま。

足りないのは、それができるという知識だけ。だから、そうしようという意思もなく、世界の政治を動かす力になっていません。

それどころか、人は、生きるためにはつらい労働に耐えねばならず、飢えに迫られなければだれも働かない、という、コンピューターとロボット登場以前の肉体労働中心の労働と経済のイメージと、それに対応する貧しい人間観にとらわれています。

そのせいで、ベーシック・インカムの研究者はようやく1000名規模の国際学会をやるまでに増えてきたものの、グローバルなベーシック・インカムに関する研究者となると、世界でもまだ数名のみです。

この文章を読まれたみなさんが、21世紀の人類をまるごと闇から救い、勇気づけるこの事業(グローバル・ベーシック・インカムの知識を深め広めること)に参加されることを願っています。

♪地域住民からベーシックインカム支持者を創り出す 2019年12月 ―ベーシックインカム運動の京畿道モデル―

…2019年11月にゼミ学生といっしょにやった韓国調査の報告論文。『アジア・アフリカ研究』60(1):43-52所収、の原稿です。

Universal,Unconditional,Lifelong,and Enough-to-Survive-Level Cash Transfer System as a Crucial Aspect of Sustainable Food System;Lessons from the Basic Income Pilot Projects in Namibian, Brazilian and Indian Villages  Full paper for ARSA 2018 OKANOUCHI

…2018年9月のアジア農村社会学会での報告論文。ナミビア、ブラジル、インドでのベーシック・インカム支給実験が農民生活改善の成果を挙げたにもかかわらず、実際に導入されない政治的障害を乗り越えるためには、盗まれた物を取り返す「匡正的正義」に基づき、土地改革を焦点とした20世紀の脱植民地化運動を引き継ぎ、資本改革を焦点とする新しい脱植民地化運動が課題となっていると指摘。人類遺産持株会社の設置を提起。

♪ Global Basic Income as a Starting Point for Redress of Historical Injustice; With Special Attention to Peacebuilding in East Asia
paper-for-bien-2016-okanouchi
…2016年7月のベーシック・インカム国際学会での報告論文(Paper Presented in BIEN Congress in Seul in July 2016)。全多国籍企業の過半数株を人類遺産として人類遺産相続基金に入れて、その配当を財源にグローバル・ベーシック・インカムを実現し、さらにあらゆる過去の恨みを対象に歴史的正義回復に取り組むことを提案。
♪ 飢餓と貧困を放置する人類史の流れをどう変えるか? 原稿 (2015)
…世界の飢餓と貧困の根絶に取り組んできた3人の著作家(サックス、ザックス、スーザン・ジョージ)の議論の検討。
人類史の流れを変えるーGBIと歴史的不正義 原稿 (2014)
…教科書向けにできるだけわかりやすく、最近の考えをまとめてみました。
Paper for ARSA 2014(revised version) by OKANOUCHI
…過疎問題に直面する中川村と大鹿村での人々のベーシック・インカムの考え方に対する注目に関する筆者なりの分析の中間報告。
先住民族の権利とベーシック・インカムのアラスカ・モデル
…州政府が原油収入から全州民に無条件で現金を配分しているアラスカの事例を、ベーシック・インカムのモデルとして発展させるには、油田となった土地を奪われた先住民族の権利を考慮に入れる必要がある論じたもの。
「地球人手当実現の道筋について」 ※第1表
…最貧国から始めれば、世界のGDP合計のわずかな額で、大きな効果があり、そのインパクトが大事、として試算した表つき。
「Towards Abolition of Wage-Slavery」
…上の論文の英語版で、2012年ベーシック・インカム国際学会で報告して評判の良かったもの。オランダのサイトから読める。
「<帝国>から地球人手当のある世界市場社会へ」
…ハーバーマス理論との接続、相続法との関連などの問題提起。
「花には太陽を、人間にはお金を」
…ネグリ等の理論の検討。
「世界の貧困とグローバル・ベーシック・インカム論」
…開発論との関連。
「地球人手当の理論序説」
…このテーマで初めて書いた論文。


「地球人手当!?―飢えと暴力をなくす特効薬―」レジュメ
講演記録
…市民講座のレジュメと講演記録。
「グローバル・ベーシック・インカムは移民問題を解決できるか?」レジュメ
テープ起こし
…シンポジウムでの報告と発言。


長野県上伊那郡中川村(2013年11月)
…ベーシック・インカム賛成の村長さんがいる村。
アラスカ(2013年8-9月)
…1980年代から州民全員に年間10万円程度を配っている州。
インド(2013年2月)
…ユニセフが資金を出して労働組合が中心で大規模な社会実験を行った。
ナミビア・南アフリカ・ドイツ(2012年9月)
…世界初のベーシック・インカムの支給実験村再訪と国際学会。
ブラジル(2011年9月)
…世界二番目でまだ継続中の社会実験村。
ナミビア(2010年9月)
…世界初の社会実験村。