奪われたものを取り戻し、子どもたちに伝えましょう!

ベーシックインカム国際学会(Basic Income Earth Network)年次大会が行われたインドのハイダラーバード法科大学講堂。壇上から叫んだ。

「奪われたものを取り戻し、子どもたちに伝えましょう! ベーシックインカムは乏しい国家予算の配分問題ではありません。国民に割り当てられるお金の規模を一定としたうえでのより効率的な貧困・福祉政策の選択問題でもありません。

長い年月をかけて、地球上のあらゆるところから奪われて、いまではグローバル企業の資本の形をとっている人類の遺産を取り戻し、全人類の手で管理して、人々が飢えて互いに争うことのないようにその遺産の果実を分かち合い、次の世代に伝えていく。グローバル企業の資本の所有権の正当性を問い、国際条約に基づいて、より正統な所有権に基づく制度に変えていく。人類社会全体の所有権にかかわる制度選択、システム転換の問題なのです。

20世紀の植民地独立運動は、人類史上最大の社会の仕組みを変える運動でした。21世紀の私たちには、第2の植民地独立運動が必要です。植民地にされた地域が独立するだけでなく、植民地にした国、された国に住む一人一人の個人の独立のために、人類の共通遺産を取り戻す運動です。…」

と、こんなふうに、すっきりと話せればよかったのだけど。実際には、「ベーシックインカムの財源問題」パネリストの一人として、原稿もなしの発言。…その場では何の質問も反応もない。

来年あたりから州レベルでベーシックインカム導入を検討中のインド・シッキム州の議員さんからは、後で、「いやあ、言いたいことはいっぱいあるんだろうけどね、最後まで英語で伝えたい、っていう情熱はすばらしいね!」

原稿を用意しなかったことを反省していると、トイレで、食事の時に、顔を見て、声をかけてくれる人が次々と。…「配分的正義じゃなくて匡正的正義だっていう話はおもしろい!賛成だ。アメリカの若い人はそう思ってない人が多いし、ぜひ論文にしてほしい」(イギリスの哲学者)、「抽象的な可能性の話ばかりの中で、具体的な言葉で財源を語ったのはあなただけだった。詳しい論文がほしい」(ドイツの活動家)、「植民地主義の問題だっていうあなたに賛成だよ!」(インドの活動家)、などなど。

ベーシックインカム導入を検討しているオーロヴィルの町でも少し話をし、州レベルで鉄鉱石採掘からの収益を次世代州民のために積み立ててベーシックインカム財源に充てる運動を展開しているゴア州では、二か所で講演会。…いずれも、にぎやかな活動家たちが、半信半疑の質問ぜめのあと、私の基本的なアイデアを理解してくれ、激励してくれる。

「欧米のNGOの西欧中心主義にうんざりして、国際問題から遠ざかって地元の運動に専念してきたけど、君のアイデアはいいね!」(日本語訳でその論文を読んだこともある80歳代の高名なエコロジスト)、「早くマニフェストにまとめてくれ! 俺たちが署名して、運動するよ!」(ゴアの大地運動活動家)、などなど。

そんなわけで、大いに励まされ、…ひとり孤塁を守るかのような自分の仕事の回りに多くの声援とまなざしをつかむ。

2016年に刊行予定だった『グローバル・ベーシック・インカム構想の射程』は、いま執筆中の「多国籍企業規制」に続き、「人類遺産持株会社」についての論文を加えて、完結とし、2020年夏にはお店に並べたいと思っています。(2019年9月21日)

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