イランとモンゴル

『イランの羊飼い』

3月に入ってすぐにイランへ。そして、下旬にはモンゴルへ行って、昨日日本へ。

グローバルなベーシック・インカム政策の実現への第一歩になるかもしれない、これら両国で2010年に導入された、全国民向けの無条件な現金移転政策のことを調べるためだ。

導入のきっかけは、どちらの国でも、次の三つ。第一に、政治的な2大勢力のぶつかりあいの中で、得票のための人気取り競争。第二に、イランは石油、モンゴルは石炭と銅という鉱物資源輸出で潤う財政。第三に、貧困層に配慮した自由経済政策をやれというIMFや世界銀行の圧力。

両国とも資源輸出好調ということもあってインフレ気味で物価がどんどん上がっている。それは現金移転政策のせいと受け取られているばかりか、実際にそのお金で買えるものもどんどん目減りしていき、おまけに人気取りのための無駄遣い政策だという批判が内外から。

その結果、モンゴルでは資源輸出不調によって昨年廃止(現在は一六歳までに限定して実施)され、イランでは政権交代後に廃止が検討中(一定以上の所得の人を除外する方向)。

イランでは大学の研究者たちに、モンゴルではNGO関係者や政治家たちに、グローバル・ベーシック・インカムの理念と現金移転への世界的な流れの中で、これら両国政府が、独特な政治・経済状況の中で、偶然、導入することになった政策の歴史的意義を力説。

かなりわかってもらえた手ごたえはあったが、時すでに遅し。自分の国の貧困をなくし、本当の発展を求める情熱をもった多くの人々は、すでにこの「ばらまき政策」に反対して動いたあとだった。ベーシック・インカムはおろか、わずかな現金移転に対してさえも、それが人々を怠惰にする無駄遣いだという偏見は、恐ろしく強い。

ベーシック・インカム研究者の歴史的使命のようなものを強く感じる。
このサイトを読んでくれたあなたも、これまでの常識的な経済に関する発想の転換を迫るこの仕事に、ぜひ加わってほしいと思う。

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